当会では、兼ねてからその活動の方向性を模索するため、その第1ステップとして「会報」の論評
寄稿・提言を頂き、参考としてきたところである。また、26年度(第Ⅲ期目)からは、「調査研究
事業」を主軸事業の一つとして位置づけ、第2ステップとして進めてきたところである。
 伝統文化を発展させるうえでの大きなアクセルとなってきたのが、少しでも良いものをと求め続けて
きた個や集団の“願望”や“欲望”であり、試行錯誤も繰り返しながら長い年月をかけて発展させ、
形ある「伝統文化
」として築き上げてきたと考えられている。

 しかしながら“伝統文化を守る”観点からの活動方向探求に於いて、趣味的あるいは嗜好(私向)的
な評価や美化では、会員を始めとする訴求相手とって、イメージ共有、或いは体験共有できない結果を
招く懸念が生じてしまうおそれがある。常に現代評価に耐えうるかと問い、留意すべきであり、また、
云うまでもないことであるが、女性の視点からの探求も
不可欠ある。

 以上の観点から、今年度はさらに深度化を図るため、
「座談研究会」を設け、調査研究事業の一環と
して位置づけたものである。その成果を今後の講座・会報・講演計画などに逐次反映し、かつ当会

基幹事業をなす「調査研究」活動へ資する方途を模索するとともに、結果的に当会および会員の
活動
方向を示唆することを目的として
いる。


             『座談研究会」の定例メンバー

       石山秀和(立正大学文学部史学科 准教授、 文学博士)
      滝口正哉(千代田区文化財調査指導員、文学博士)

      亀川泰照(荒川区ふるさと文化館 主任学芸員)
      加藤紫識(千代田区文化財調査指導員、民俗学博士)
      浦井祥子(徳川林政史研究所 非常勤研究員 文学博士)

       
    なお、今後の進展度合により、臨時に適任者を招聘することとしている

          【Ⅰ】第1回座談研究会の開催(8月26日(火)18時から開催)

                    
要  約

 「日本の伝統を守る会」は、その活動の基軸部分である講座テーマのあり方や会報執筆の方向性
を改めて探るため、講座の講師を経験した人達を含めた5名により「座談研究会」を立ち上げ、
その第1回会合を開催した。

 冒頭にリーダー役の石山准教授の基調報告から議論が始められた。その骨子は、「江戸庶民文
化」
に上記テーマの基盤を求め、さらに時代毎の変遷や変化など、伝統文化の「変容」を取り上
げるのが有効な方法論として示された。なぜなら、研究者の目から見ても今日「伝統文化」として
何らかの説明がなされている事象には、“作り込まれている”ものが多いことを体験しているから
である。  
 しかしながらその実態を、史料などを根拠に100%表現したとしても、大多数の人々の思い
描いているイメージと異なる場合もあり、興味を殺いでしまう結果になり兼ねない。

 したがって、そうしたイメージと乖離させない範囲で提示し、幾つかの点で実態を付け加えなが
ら、それら変容の過程などを説明するならば、容易に受容されると考えられる。因みに、ここでは
“作り込まれている”との表現を用いたが、歴史的にみても何らかの理由、例えば国家権力や政策、
祈願や町おこしなどが動機となって
“変容させた”、或いは“変容した”現在の姿・有り様を、
そのように表現したものである。

また、“伝統文化は変容する”と考えたとき、それを歴史学的に、或いは民俗学的に見たらどうな
るかと云う議論もなされた。テーマに依っては両者から考察を加えることも有効であろうし、要はタ
イムリーな基軸テーマを設定し、聞いたり見たりする人に興味関心をもたせるアプローチやセールス
ポイントが不可欠であるとし、
「3T戦略」なる概念も披露された。

まずは「江戸庶民文化」に起源する伝統文化の“「存在」自体を知ること”、即ち、名称とその
起源、変容、そして現在の姿・有り様を正確に知得すること、そして次に
“「変容を与えた諸要因」
を知ること”
が伝統を守ること、継承することにつながってゆくと考えることができる。

   講座や会報記事のいずれも、このような考えのもとで体系的に取り上げてゆくべきとされ、
 12月発行予定の会報から適用することとし編集会議を重ねている。


           
【Ⅱ】第2回座談研究会の開催(11月26日(水)18時から開催)

                     
要  約

 第2回「座談研究会」討議は、第1回の集約事項を確認のうえ、江戸時代に育まれ確立された
「江戸庶民文化」を、講座および会報へ反映する場合の方向性を示す「主テーマ」を、3項目で
議論した。
 
(1)『世界に誇れる生活文化』に関しては、“伝統文化とその歴史を語れる”会員像を
     をめざすこと。

 (2)『生活が築いた家庭文化』に関しては、行事や儀礼、娯楽およびそれらに付随する
    衣食住文化を多面的に取り上げること。

 
(3)『生活文化と社会制度』に関しては、 伝統文化の形成基盤および変容要因を、政治・経済・
     社会制度や付随する慣習面から明らかにすること。


と集約し、解釈した。なお、第(1)に関しては、同趣旨の会員蔵形成後の将来課題として、外部発信に
ついて検討することとした。


 提起されたポイント発言を集約すると、「江戸庶民文化」に基盤を置き、


 (1)当初段階に於いて取り上げる「対象文化」について
   
日本の気候風土並びに民族性や気質が反映された生活文化や慣習を中心とする。
   この場合「折衷文化」や「神・カミ」、「信仰論」などが必然的に考慮される。

  
  (1)に関して言及された“文化的キーワード”は、以下のようである。
   
  年中行事、祭礼、時候儀礼、人生・通過儀礼、信仰と旅・娯楽、御守り・御札、
    生業と女性、
江戸の町(仕組み・長屋・火消し制度)、和服、畳と布団
 (2)対象文化にまつわる「変容」について
  
  結論部分に、変容した転換期(江戸時代、明治・大正、戦後など)を正確に捉え、
   変容を踏まえたうえで評価を加える。さらに、変容を与えた諸制度や慣習などから
   演繹して、他の複数文化も共通的・横断的に解明を加える。

 (3)表現方法について
    アピールし易く、分かり易い部分から解説を起こし、できる限り複数事項を“文化
   的キーワード”でつなぎながら構成する。この場合、可視的な“もの”の挿入も
   考慮する。

   以上から、本会活動に適用する『行動指針』は、次のように考えられた。

  1.日本人気質や気候風土が反映された文化や習慣に関心を持とう。

  2.伝統文化とその歴史が語れる会員像をめざそう。

                             

         【Ⅲ】第3回座談研究会の開催(2月23日(月)18時30分から開催)

                     
要 約
   

 時代を越えて通底するものは存在するが、何かしらの“変容”を遂げていて、見掛けが変わり、或いは本質が変わったり
しているのが当たり前で、その“変容”を意識して、「伝統文化」を知らせる、知って貰う態度が、正しい日本の伝統文化への
理解につながるものと共通認識してきたところである。
 時代を経る毎に、文化には何某かの“画期”が必ず伴うものである。結論的には、先ずは“政治”、そして“経済”や“社会”
などによる「画期要素」と言うことができるが、これらにも夫々に、また幾つかの変革期が内在している。
 こうした観点から具体的テーマについて論評展開すれば、どの時代の、どのような政治・経済・社会の影響を受けてきた
文化慣習であるかなどが明らかになるので、

 ①これまで討議・集約した“変容”と“画期”についての説得性・納得性が得られる。

 ②複数の伝統文化テーマとその変容事例を知ることができれば、他の伝統文化要素についても
   類推が可能となり、多くの伝統文化を学ぶ“態度”形成につなげることができる。


と云った進展が見られるはずである。但しこの際、“古いものが良い”と云うような印象を与えることのないよう、留意すること
が相互に不可欠であることは云うまでもない。
 伝統文化の「全事例」について、この研究会討議、会報、講座に於いて論評展開することは、物理的に不可能であるため、
“学習態度”を会員に周知し、習得する方法論を採用するのが妥当であろう。

 これらの一つの切り口として、今年度の歴史教科書の記述改定が参考になると思われる。専門的に走らず、一般の人にも
分かり易い範疇として教科書内容も参考とすべきとし、そこに最新の研究成果なども織り交ぜながら話題展開する方法論で
ある。捉えた文化事象ごとに様々な変容と画期把握があって初めて、今日まで繋がっていることが確認できると考えられる。

 以上のようであるが、しかし過去にもあったように、何らかの時代的欲求や経済的効果の目的で、突然新しい“用語”や“
フレーズ”が飛び出し、世の中に一定のインパクトを与えることがある。使いようによっては「恰好良い」と受け止められること
が間々あり、注意を要する点であろう。

座 談 研 究 会

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